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東京家庭裁判所 昭和38年(家イ)2261号 審判

審   判

国籍

アメリカ合衆国

本国における住所

アメリカ合衆国カリフオルニヤ州

ロスアンゼルス市<以下省略>

申立人

○○○○○○○○

上記申立人代理人

曾根信一

吉永光夫

住所<省略>

相手方

○○○○

上記相手方法定代理人実母

○○○○

上記当事者間の嫡出子否認調停申立事件について、当裁判所は次のとおり審判する。

主文

相手方が申立人の子であることを否認する。

理由

本申立の要旨は、次のとおりである。

申立人はその先代時代から園芸業を営んでいた両親の住所地であるアメリカ合衆国カリフオルニア州ロスアンゼルス市において一九二七年九月二八日生れたアメリカ合衆国の国籍を有する男子であるところ、申立人一家は一九四五年一二月故国である日本に引揚げた。一九五五年八月三一日申立人は相手方の生母である○○○○(一九二八年一月四日生れの日本人女子)と婚姻挙行地である東京都中央区長に婚姻の届出をし、都内市ケ谷砂土原町に居を構え同棲生活に入り、夫婦仲もいたつて円満で両名の間には長男○○が一九五七年一〇月八日生れた。しかるに、申立人が就職先を京城に選んだことから夫婦がはなればなれに暮らすことが多くなるについて申立人の夫婦の愛情は変らないのに、妻は一九六〇年六月一九日から周囲の諫止にも応ぜず愛人○○○○と同棲生活を続け両人の間には一九六二年六月二日相手方が生れ親子三人円満な家庭生活を営んでいる。ここにおいて、申立人も妻○○との円満な夫婦生活の復活を営むに由なきにいたつたので一九六三年三月一五日調停離婚をしたのである。なお申立人の両親は一九五七年再度渡米し、従前の営業地であるロスアンゼルス市において園芸業を再開して現在に至つている。従つて、申立人の本国(Homo State)はカリフオルニア州であるが、同州法によれば、相手方は申立人と相手方の生母○○の婚姻中に懐妊され、且つ生れた子であるから、一応婚姻により生れた子と推定されるのであるが、真相は上に述べたとおりで相手方は妻○○と○○○○との間の子であること一点疑を容れる余地はないので、相手方が申立人の子であることを否認する旨の審判を求めると云うのである。

按ずるに、申立人主張の事実は相手方の認めるところであるのみならず、当庁昭和三五年(家イ)第三八五七号及び昭和三八年(家イ)第五三一号の記録と本件記録とを彼此対照すれば極めて明らかなことである。しかして、法例一七条によれば、相手方の嫡出なるや否やは其の出生当時の母の夫の属したる国の法律に依つて定めるべきところ、アメリカ合衆国は州によつて法律を異にすること当裁判所に顕著であるから、同法二七条三項によつて、申立人と最も密接な関係のある州と認められるカルフオルニヤ州法に準拠すべく、同州民法典一九三条ないし一九五条によれば(The Givil Code of the State of California)、少くとも婚姻中妻が懐妊し、且つ出生した子は嫡出の子と推定され、しかも、その嫡出性(legitmacy)は夫又は妻及び夫又は妻の子孫若しくは夫妻双方の子孫によつて論争し得ること明らかであるから、申立人の本件申立は理由があるので、家事審判法二三条にのつとつて、主文のとおり審判する。

昭和三八年七月四日

東京家庭裁判所

家事審判官 加 藤 令 造

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